『東京漫遊談笑 NO41』
【 バブルの始まりと庶民の暮ら
し 】
《 バブル期Ⅰ 》
《 バブル期Ⅱ 》
《 バブル期Ⅲ 》
《 バブル期Ⅳ 》
〚 バブル期Ⅰ 〛
《 ここは、東京八重洲口から
近い、ダイヤビルの新川だ
べな 》
《 倉庫と庶民の生活の場だ 》
《 八重洲通りの行き止まりの
隅田川沿岸のところだ 》
〚 私の心の中 〛
東京駅から、ここに来
るなんて~、ダイヤビ
ルに行くでもないし。
〚 私 〛
お客さん、ここは、ダ
イヤビル以外、小さな
庶民の住居しかありま
せんよ。あとは、住友
の倉庫前だけですよ。
〚 お客様 〛
あぁ~、東京駅から近
いですね。ここはいり
くんでいるので、
待ってて下さい。一発
回答を得てきますから
。
〚 私 〛
分かりました。このまま
、待っています。
どうぞ、ごゆっくり。
〚 私の心の中 〛
一発回答とは、何のこと
だ。解せないな。
〚 お客様 〛
お待たせ。
人は、欲が絡むと、一発
回答までは、行かなか
ったけど、まぁまぁ、
いい返事だったよ。
〚 私 〛
それは、良かったです
ね。
でも、なんのことか、
さっぱり分かりませ
ん。
〚 お客様 〛
あぁ~、地上げの交渉
だよ。
先だって、窺った折の
再確認だよ。
あの辺りは、今、坪1
00から150万の値
段だけれども、これを
200から250万の
値段で買うという交渉
だから、いい話だよ。
〚 私 〛
お客様のところは、資金
繰りがいいのですね。
高度成長で儲けました
ね。
〚 お客様 〛
いや~、そうではなくて
、銀行が融資してくれ
るから、それを利用する
のだよ。
これまでの会社経営が、
順調だと銀行が融資して
くれるんだよ。
すぐに転売を考えて買い
付けをするのだけれども
ね。
〚 私 〛
金利もバカにならないと
思いますけど。
〚 お客様 〛
それを超えて早いとこ転
売するしないと、損益は
出ないからね。
〚 私 〛
なるほど。
〚 お客様 〛
あの辺り、大手企業が買
収するので、大丈夫なん
だよ。
〚 私 〛
庶民は、お金に目が眩み
ますよね。
〚 お客様 〛
うむ~。
〚 私 〛
東京駅八重洲口になり
ます。
ありがとうございまし
た。
運賃は、・・・・・円になり
ました。
忘れ物に気を付けて、
降りて下さい。
金融の本音をお聞きし
まして、感謝します。
ありがとうございまし
た。
〚 私の心の中 〛
金融業界も、思い切っ
た試案を行動し始めた
な。
企業は、根抵当枠を、
本業以外の投機にも、
融資を受け、それを手
付に、頭金に転用運用
し、買い付け本体の価
格を、借り入し、金策
としたことであろう。
銀行金融業は、最終事
業の返済を充てる目論
見であろう。
この全般は、後日の世
相談話シリーズに委ね
よう。
〚 バブル期Ⅱ 〛
《 押し寄せるお金の波 》
《 町中の飲食界隈 》
《 驚きの変化の庶民生活感 》
〚 私の心の中 〛
おぉ~、凄い人だ。
こんなに、多くの人々
がいるなんて。
お客様だらけだ。寄っ
てくる、寄ってくる。
〚 私 〛
どうぞ、お乗りください
。
〚 お客様 〛
赤坂に行ってくれないか
な。山王下でいいから。
〚 私 〛
分かりました。このまま
アンダーパスを潜ってい
きますが、よろしいで
すか。それでは、メー
タを入れます。
〚 お客様 〛
忙しいなか、近くてす
まんな。
〚 私 〛
しかし、飲食界隈の人
の多さには、驚きます
。
〚 お客様達 〛
〈 部下の一人 〉・・・・・部
長、今日は
いつもと違
って、あの
子の店がい
いですね。
〈 部長 〉 ・・・・・今
日は、そう
するか。う
む~。
あぁ~、運
転手さん、
そこでいい
よ。
近いところをすまんな。
お釣りは、いいよ。
〚 私 〛
えぇ~、一万円札のお釣
りが多いのですが、代金
は、870円です。
こんなにチップを頂くな
んて、よろしいのですか
。
〚 お客様 〛
気持ちよく、乗せてくれ
てありがとう。
頑張って下さい。
〚 私 〛
ありがとうございまし
た。
〚 私の心の中 〛
お釣りの9130円をチ
ップでくれるなんて、世
の中は、金銭感覚がおか
しくなっているな。
吾輩にとっては、うれし
いことだが~。
〚 バブル期Ⅲ 〛
《 株価の上昇、不動産価格の値
上がり、ゴルフ会員権の上昇
が、ニュースの大半を報道し
ているな 》
《 一億総不動産屋のような土地
の値上がりが続いている 》
〚 私の心の中 〛
この頃になると、世間で
、バブルという言葉が、
流行り始めた。
因みに、この地価の高騰
は、先ず、商業地域の地
価の高騰に始まり、次第
に住宅地域に及び始めて
いる。
市民生活は、この地価の
高騰が、住宅地域に及び
始めてから、変化してい
る。
さぁ~、大変なことが起
こりだしている。就労対
価のお金しか手にしたこ
とが無かった町中の人々
が、住居にしている場所
の評価が上昇し、予想外
のお金を手にしたと錯覚
し、生活感を変えていく
ことが見えてくる。
これは、高度成長期に企
業が得た事業成果が、角
度を変え、町中生活に押
し寄せてる、お金の洪水
である。
〚 バブル期Ⅳ 〛
《 金余りの実情 》
《 余波のニュース 》
《 町中の動揺 》
〚 私の心の中 〛
町中の生活感に近づこう
。
〚 私 〛
おゃ~、奥さん風だ。手
招きしている。
〚 お客様 〛
お願いします。良かった
。少し遠いけどいいか
しら。
世田谷の田調布にお願い
します。
〚 私 〛
お客さん、深川とは~、
いい所にお住まいですね
。
田園調布のあちらは、道
路は、狭く、道は、うね
っていて、大 変ですが、
その点、この深川辺りは
、道幅も広いし文句の
つけよう がないから~
。
しかし、世の中、変化し
ていますね。バブルとか
で。
〚 お客様 〛
でも、今日は、世田谷の
田園調布の土地を見に
いくんですよ。
住宅が、高い評価で、
これなら田園調布の土
地も買えそうで。
〚 私 〛
えぇ~、そうでしたか
。それは、それは。
して、どうしてですか。
〚 お客様 〛
深川辺りは、海抜0メー
ター地帯で、土台の淵に
は、水が溜まっているの
ですよ。
心配だから。この際、
考えようということでね
。
〚 私 〛
そういう心配事がありま
したか。
なるほど、この辺りは海
抜0メーター地帯という
ことでしたか。
その影響ですかね。
しかし、思い切った考え
ですね。この東京のど真
ん中のすぐの所にいて。
〚 お客様 〛
えぇ~、でもね。
〚 私 〛
田園調布は、どのあたり
ですか。
〚 お客様 〛
ダイエーの社長の近くで
す。
〚 私 〛
分かりました。
着きました。
ありがとうございまし
た。
運賃は、・・・・・円になり
ました。
忘れ物に気を付けて、
降りて下さい。
ありがとうございまし
た。
〚 バブル期Ⅴ 〛
〚 私の心の中 〛
政府・日銀のバブル対処
策によるバブルの崩壊と
国民の暮らしへの影響
を考えるとしては、過
去の経済成長期において
、企業の収益を、企業
の資本準備資金への適切
な備蓄並びに就労者に対
する適正な就労対価とし
て、分配していれば、こ
んなことは無かったと思
われる。
労使交渉につく方々が、
有識の知恵を修得して
いれば、なんなく時の
流れとともに、解決して
きたことであるが、労働
者側の在来からの卑屈な
先入観と、使用者側の欲
の突っ張りが絡み、先
を読み理解していなかっ
た結果である。
時代の変化を読み取り、
適宜な対策を講じる判断
をして、実行することは
、難しいことだったの
であろうか。
往年の経営者は、優秀
な番頭達とともに、そ
の道標を残していたに
もかかわらず、近年の経
営者は、このことを把
握し理解していなかっ
た。
常に、経営者が、その
判断力と知恵を習得し
ていれば、そして 、就
労者側も、在来からの
卑屈な先入観にとらわ
れこともなく 、堂々と
経営者と渡り合ってい
れば、時の流れととも
に、解決してきたであ
ろう。
就労者側の在来からの
卑屈な先入観に捕らわ
れた団体交渉と、経営
者側の欲の突っ張りの
絡みが、往年の卓越し
た経営者と、有議の知
恵を必死に学んでいた
番頭の領域を超えられ
なかったことから、生
じたことであろう。
しかしながら、総額
の資金量( 約200
兆円 )から見れば、
大 変な額であった。
就労者がその半分が
分配されたとすれば
、就労者を5000
万人とみて、各自に
分配されたとしたら
、約200万円にな
る。
本来分配しておれば
、就労者達は、別の
使い道を選び、世の
に、新たな展開を生
んだであろう。
しかし、現実は、豊臣
秀吉と同じく、金品を
見るや己を見失い、酔
い潰れてしまった。
無知無能な経営者並び
にそこに就労する輩は
、その対価を、洗剤の
アワの如く浪費してし
まった。
徳川家康は、天下統一
を成すや、人々の所属
分類を士農工商とし、
産業や商人の存在を重
要とし、その人的分類
をし、これからの治世
の道を見いだそうとし
ている。法の規則を敷
くことから、この士農
工商は、身分制度とし
て世に存在することと
なり、聖徳太子の官位
制定の大化の改新以来
、久々に、人の仕訳に
踏み込んでいる。官位
制定から見れば、征夷
大将軍は、高い地位に
あるのではないと知る
や、征夷大将軍下の配
下、領民の立場、そし
てこれから起こるであ
ろう商工に携る人々の
分類に、手をだしてい
る。このことは、徳川
家康が、聖徳太子を超
えるバーの高さに届い
ていることの証明ある
。
バブル期は、人々にか
つてない試練を与えつ
つ、展開していった。
これが、バブル期の実
情である。
このバブル期の終わり
期の政府対処策とその
顛末は、この期に予定
する世相談話シリーズ
の論に委ねるとする。
『東京漫遊談笑 NO42』
【 長州藩上屋敷の高杉晋作の
刀傷 】
《 ここは麻布十番から六本木に
つがる一帯だべな 》
《 江戸旗本御家人の集落だべ
な 》
《 あの総持寺のお坊と回った曹
洞宗の檀家の一帯だ 》
《 ここは長州藩上屋敷の跡を陣
取ったテレビ朝日があるな 》
〚 私の心の中 〛
おや~、解体作業が進ん
でいるな。テレビ朝日の
旧い長州藩上屋敷の建物
を壊している。
ここにまつわる話は、多
い。
忠臣蔵の浪士四十七名の
内約十数名が、この上屋
敷の毛利家に預けられ、
その後お上の命により、
切腹打ち首となってい
る。
辺にある池で、太刀の
血を洗ったという池も
ある。
高杉晋作、久坂玄瑞等
は、長州藩上屋敷のこ
の池で、寄り合い談笑
していたのであろう。
おぉ~、先に老人が、
手を上げている。
〚 私 〛
お待たせしました。
どうぞお乗りください。
〚 お客様 〛
東麻布の法務局に行って
下さい。
〚 私 〛
分かりました。鳥居坂の
横を通っていきますが~
。
では、メータを入れます
。
お願いします。
〚 お客様 〛
この解体には、注意して
欲しいことがあるんだけ
れども、テレビ朝日は
、分かっているのかな
。歴史の一刀の刀傷が
あるのを。
〚 私 〛
えぇ~、それは何ですか
。刃傷とは。
〚 お客様 〛
高杉晋作が、思い余って
一刀を柱に振りかざした
、刃傷だよ。
久坂玄瑞等と寄り合っ
ていた折、振りかざし
た一刀だときいている
よ。
その柱を残してほしい
。二度と手にすること
は出来ないからね。
もし、その柱の行方に
係る話があったら、是
非知らせてほしい。
乗ったところの家だか
ら。
テレビ朝日、ヒルズも
そんなの目にもかけな
いだろうからね。
この屋敷には、色々あ
るからね。
池が、この中にあるけ
れど、あの池は命の池
といって忠臣蔵の浪士
四十七名の内約数十名
が、この上屋敷の毛利
家に預けられ、その後
お上の命により、切腹
打ち首になっている。
この辺りの池で、太刀
の血を洗ったという池
もある。そこで、この
池を血の池といってい
るよ。
まだまだあるよ。
庭の辺に、乃木大将の
銅像が、あってね。
それは乃木大将が非番
の日は、国の命令で戦
地で亡くなった戦友等
の慰問をして回ってい
たそうな。
それを聞き知ったご遺族
達が、建てさせてもらっ
た銅像だそうだ。
慰問に来た方が、どなた
か分からないまましてい
たことが、各家庭の方の
話しから、それが、 乃
木大将であったことを聞
き知り、申し合わせて建
てさせてもらった銅像だ
そうだ。
まさに、乃木大将の人と
なりの姿を見るようだ。
その銅像の行く先も知り
たいことだよ。
そんな歴史を抱えた処だ
から、無造作にして欲し
くないよ。
あぁ~、そこでいいよ。
ありがとう。
情報があったら頼むよ。
〚 私 〛
ありがとうございまし
た。
運賃は、・・・円になりま
す。
お忘れ物に気を付けて
、降りて下さい。
聞き捨てられない貴重
な話を頂きました。
情報があったら、ご連
絡します。
ありがとうございまし
た。
『 東京漫遊談笑 NO43 』
【 源頼朝に係る塚の由来と、
これにまつわる話し 】
《 ここは、世田谷の入り口とも
云える、国道246池尻大橋
の傍だべな 》
《 世田谷住宅街の中に向かっ
た処だ 》
《 静穏な住居が立ち並ぶとこ
ろだ 》
〚 私の心の中 〛
おぉ~、先に、中年の
おやじさんが、手を上
げている。
〚 私 〛
こんにちは。お待たせし
ました。
どうぞお乗りください。
〚 お客様 〛
お昼の下り線は、タク
シーだ少ないな。
やっと乗れたよ。
〚 私 〛
そうですか、それはそ
れはでした。
して、どちらへ。
〚 お客様 〛
目黒郵便局み、お願いし
ます。
〚 私 〛
分かりました。このまま
国道246を真っ直ぐに
下り、三宿の交差点を左
折で行きましょうか。
よろしいですか。
〚 お客様 〛
そうすれば、五本木、
学芸大前駅を過ぎたとこ
ろを左折すると、そのま
ま真っ直ぐで行けるね。
そうしてください。
〚 私 〛
それでは、メータを入
れます。お願いします。
〚 お客様 〛
私は、会社を退職して
から、この世田谷界隈
の史跡を調べています
よ。
この辺りでは、下馬通り
の入り口にある塚なんか
、不思議でしたね。
盛り度がしてある土の
塚ですよ。
〚 私 〛
あぁ~、あの盛り土で
すね。
道筋の真ん中にあるの
で、道筋は、 回って通
してある。
いつも厄介だなと思い
ながら、通ってますよ。
あの盛り土も、史跡な
んですか。
〚 お客様 〛
あの塚にも、歴史が潜ん
でいます。
鎌倉時代に、鷹狩りに来
た、源頼朝の愛馬が、具
合を悪くし、この地に埋
葬して出来た塚というこ
とです。
この辺りは、小さい木々
の生い茂る処で、鷹狩
りによい処だったのでし
ょう。
あちらこちらに、鎌倉街
道という道筋があります
が、関東奥の武将達が、
鎌倉幕府に馳せ参じた
街道でしょう。
従って、この地が、鷹狩
りに適した処と進言さ
れ、行われたことでしょ
う。
この地域は、この塚の
存在から、その地名に
、影響を与えています
。
下馬、上馬、若林、駒沢
といった、馬、林に係る
地名が今に
なっています。
鎌倉時代に、まだ、地
名が定まっていないこ
とから、この地の民、
百姓は、この馬に由来
する名を付けて、呼び
かわす日々が偲ばれま
す。
〚 私 〛
なかなかな、講釈ですね
。素晴らしい。定年後
の理解ある話しですね。
〚 お客様 〛
定年後、こんな日々を
送っています。
まだまだ、史跡から推論
できることがあります
よ。世田谷城 址、松陰
神社、井伊直弼を埋葬
している豪徳寺らと数
えきれないくらいあり
ます。
それぞれに、いわくが
あります。
定年後を、これらを散策
し、推論を重ねていこう
と思っていますよ。
〚 私 〛
お話しを窺っている間に
、目的地に着きました。
聞きたいことが、山ほど
あります。また次回、お
会いすることを願ってい
ます 。
ありがとうございました
。
運賃は、・・・・・円になり
ました。
お忘れ物に気を付けて、
降りて下さい。
次回を、楽しみにしてい
ます。
ありがとうございました
。
『東京漫遊談笑 NO44』
【 版画の絵師の ' しおり ' を愛
好するお客様と私の接点 】
《 そうだ、東京拘置所から小菅
の拘置所に移管された田中角
栄先生の跡を見聞しよう 》
《 ここは、小菅の拘置所から
隅田川を渡った綾瀬川だべ
な 》
《 ここにも、高速側面のコン
クリート壁に囲まれた寂し
い通りだな 》
〚 私の心の中 〛
こともあろうか、無知無
学の貧民な政治家気取り
の高知の出の政治屋で、
清貧を売り物に、徒党を
組んだ輩の名誉欲の餌食
にされ、世間の風評を
煽り、総理にまでなっ
た政治屋のクズの餌食と
され、非業の最期とな
った田中角栄先生を偲
ぼう。
清貧を売り物にして、政
治屋業を続けて、高知の
県民の無知無学を支えに
生きた世間の寄生虫であ
る。
この後には、小政党徒
党ながら小銭のバラマ
キに屈した、または比
例代表制の徒党化の政
治屋の集団を背に、総
理、または親の七光り
総理候補らを出してい
る。
これらのことは、この
後の世相談話シリーズで
論及すべきことではある
が、この漫遊談笑シリー
ズのここで、一部触れ
た。
心騒ぎは収まらず。
政治の偉業を懸案する
中で、心が騒いでしまっ
た。
おや~、なにかお師匠
さん風の初老の女性が
、和服の姿で、先で手
を上げて私を待っている
お客だ。
〚 私 〛
・・・・・お待たせしました
。どうぞ、お乗りくだ
さい。
〚 お客様 〛
お願いします。ここは、
空車が少ないわね。銀
座四丁目の鳩居堂に、
お願いします。
道順は、お任せで。
〚 私 〛
はい、分かりました。
では堀切橋、浅草から
江戸通り、昭和通り三
原右折で行きます。
それでは、メータを入
れます。
お願いします。
〚 お客様 〛
よくこんな所を通ってい
ましたね。
滅多にお昼は、空車は
来ませんが。堀切菖蒲園
駅まで、歩こうと思って
いました。
〚 私 〛
そうでしたか。
私は、東京拘置所から
小菅の拘置所に移管さ
れた田中角栄先生の跡
を偲ぼうと思いながら、
こちらを通っていました
。
〚 お客様 〛
田中先生は、不遇なこと
でしたね。
あんなに、一生懸命に
生きた人は、いません
ね。戦乱の荒波にさら
されて。
〚 私 〛
ところで、鳩居堂とは
。お買い物ですか。
しかし、鳩居堂とは、
基本、文房具屋さんで
すが~。
〚 お客様 〛
’ しおり ’が、手持ちきら
してまして。
わたくしは、ひと様から
贈答、お便りをいただき
ますと、そのお返しのご
返事には、’ しおり ’に想
いを書き、そのしおりを
添えてお送りする習慣が
ありまして、いつもは、
京都のあるところから、
補充して送っていただく
のですが、今日は、それ
が間に合わないので、そ
のしおりを買い出しに行
こうということですよ。
〚 私 〛
’ しおり ’ですか。大切な
思いを伝えることは、い
いですね。
そして、京都のあるとこ
ろとは。
〚 お客様 〛
ご存じないとおもいます
が、ピョンピョン堂とい
いまして。
なかなか、良い ’ しおり ’
を頂けますよ。
そのピョンピョン堂から
の ’しおり ’が、まだ届き
ませんでね。
〚 私 〛
えぇ~、ピョンピョン堂
。いゃ~、ビックリで
す。
わたしは、そのピョンピ
ョン堂を知っています。
私の物語を、聞いていた
だけますか。
実は、数年前、松戸の市
民会館で行われた、元外
務大臣園田直先生の講演
ということで、拝聴に行
きました。
その折、席の隣にいらし
たご老人が「帰りに、一
緒しませんか」と声をお
掛けになり、トッサに私
は、帰りの杖代わりを求
められていると思い、「
いいですよ。ご一緒しま
しょう」と返事をし、ご
老人と一緒に会場をあと
にしました。
ご老人の自宅に着くと、
「お上がり下さい。お茶
を召し上がって下さい。
用意します。」と言われ
、座敷に上がりました。
〚 ご老人 〛
お茶をご馳走になり、そ
の間に、奥の部屋から、
絵の束をお持ちになり、
「ご覧ください。これ
は、安藤広重の直の版
絵です。日本に、三つ
しかない、安藤広重の
直の版絵です。
残り二つは、博物館に
あったのですが、戦時
下敗戦となり、博物館
にあった物は、接収を
受け、国外に持ち去ら
れ、父の民間の手にあ
ったこれは、接収を逃
れました。だから手元
にあります。」と話され
ました。
続けて、
「私の家は、茨城の庄屋
でして、東京芸術大学の
若い生徒達に別荘を、絵
の勉学に供する場として
、提供していました。
若い芸術家を夢見る若者
達が、居候していました
よ。描き崩しのものも、
沢山残っています。」
私は、ジックリとその版
絵を見ました。
〈 そして、私は、このご老人
に問いかけました 〉
「これらの絵は、相場
的にどれくらいの値の
ものでしょう。
これだけの版絵を執る
絵師は、現在おられま
すか。」と。
〚 ご老人 〛曰く
値は、幾らとともつけ
れません。一枚、数百
万にもなるでしょうね
。
もし、版絵を取る絵師
がおられるとすれば、
浅草におられます。
私は、その方の住所、
氏名を聞いて、このお
宅を失礼しました。
それから、私は、ご老
人から聞いた絵師を尋
ねるべく、その方の住
所、氏名を求めて行き
ました。
ところが、その方は、
京都に移られた旨をお
聞きし、今度は 、今度
は、京都の住所を尋ね
て行きました。
京都にその方を尋ねたと
ころ、その方の奥さんが
おられました。
奥さんからお聞きしたと
ころ、ご主人は、数年前
に他界されたということ
でした。
残された奥さんは、ご主
人が残した版絵を ’ しお
り ’にし、玄関先で売っ
て商いをしていると言っ
ていました。
そのお店の名が ’ピョン
ピョン堂 ’という屋号で
した。
〚 私 〛
この経緯から、聞き知っ
た ’ピョンピョン堂 ’をお
客様からお聞きし、ただ
、驚きました。
〚 お客様 〛
私も、京都の ’ピョンピ
ョン堂 ’というお店の名
前を知っておられて、ビ
ックリしましたよ。
買い物、は過ぐ終わりま
すので、待っていてくだ
さいますか。
〚 私 〛
承知しました。ここでお
待ちしています。
〚 お客様 〛
お待たせしました。
私は、この ’ しおり ’に
その方への想いを書いて
、ご返事する
習慣がありまして、楽し
みです。
一束280円でした。
三束買いましたが、一つ
は、運転手さんにと想い
買ってまいりました。
どうぞ、一つはもらって
ください。
そして、何かのご返事に
は、想いをしおりに、し
たためて下さい。
〚 私 〛
今日は、長々とお話をし
、さぞ、聞き疲れになら
れたでしょう。
驚きのあまり、お話しし
ました。
また、 ’ しおり ’までいた
だいて、恐縮してしまい
ました。
ありがとうございました
。
〚 お客様 〛
私こそ、京都の ’ピョンピ
ョン堂 ’の看板を知る機会
になり、
ありがとうございました
。
無事に買い物ができまし
た。
ありがとうございました
。
〚 私 〛
運賃は、・・・・・円になり
ました。
お忘れ物に気を付けて、
降りて下さい。
次回を、楽しみにしてい
ます。
ありがとうございました
。
〚 私の心の中 〛
いや~、驚いたな。
こんなことから ’ピョン
ピョン堂 ’のことが、話
題になろうとは。
安藤広重の東海道五十三
次の版絵が、絵師を通じ
て関係した話だ。
実物という高価な代物が
語る現実だ。
まさに一人の絵師が語る
目に見えない ’ピョンピ
ョン堂 ’の歴史だ。
『東京漫遊談笑 NO45』
【 お金に困った若者 】
《 ここは、繁華街を過ぎた処だ
べな 》
《 繁華街の人並も無くなった処
だ 》
《 ビル米の谷間だな 》
《 この場所は、私にとって最高
の休まるお昼の休憩場所だ 》
《 誰もトントンと、ドアを叩く
人はいない 》
〚 私の心の中 〛
おぉ~、先に、若者が
、手を上げている。
酔っぱらいの酔い覚ま
しだろう。
〚 私 〛
お待たせしました。
どうぞ、お乗りくださ
い。
酔っ払って酔い覚まし
をされていましたか。
〚 お客様 〛
いやぁ~、東京湾晴海
埠頭の方へ行ってくれ
。
〚 私 〛
そうでしたか。
では、このまま真っ直
ぐで東京湾晴海埠頭に
いきます。
よろしいでしょうか。
〚 お客様 〛
早く行け。
〚 私 〛
分かりました。
それでは、メータを入れ
ます。お願いします。
〚 私の心の中 〛
不穏な若者だな。様子が
、おかしい。
〚 私 〛
このまま行くと、船着
きの岸壁ですが。
〚 お客様 〛
あぁ~、ここでいい。
〚 私の心の中 〛
サヤの擦る音、ス~~
。
アァ~。こんなところ
で、犯行におよぼうと
しているな。
横浜の社長の言動を守
ろう。
「なんでもあるものは
、クレテヤレ。今、身
に付けてる物は、必ず身
に付けることが出来る。
人間は、生まれてくると
きは 、みんな裸だ。今
、身に付けているもの
は、その後身に付いた
物だ。必ず身に付ける
ことが出来る。パンツ
までクレてやれ。生身
の体を守れ。」
〚 お客様 〛
お客さん、あなたは、
今、お金に困っている
ね。そんな物騒なもの
は、仕舞って、おきな
さい。
ここに売り上げの財布
がある。
この財布に、今日の売
り上げの約35000
円が入っている。
これを、持っていきな
さい。あげるから。
私は、仕事があり、明
日また稼ぐことが出来
るから心配無用。
あなたにあげるのであ
って脅して奪うもので
ないから、犯罪では、
無いないから、ドウド
ウともっていきなさい
。
《 刀剣を収め、お客は無言の
まま車から降りていく 》
《 立ち去る若者を呼び止め 》
〚 私 〛
今日からの寝泊まりと
仕事を探すのであれば
、横浜の山下埠頭にい
けばよい。
2~3週間頑張れば、
その後の生活資金が、
手に入るから。
〚 若者 〛
無言で、頭を垂れる。
〚 私の心の中 〛
横浜の社長の言動に助
けられたな。
社長、ありがとう。
再発の危険はあるまい。
よし、よし。
〚 私 〛
メータ分と売上分を手配
しなければならないな。
大変だな。
しかし、頑張ろう。
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